
*間違った「お施主様アンケート」は、ムダ
家を建ててくれたOB客に「お施主様アンケート」や「お客様アンケート」を行っている住宅会社は多い。
お客様の声を経営に反映させようという考えは良いが
実際に活用できている会社というのは、意外と少ない。
あなたの会社では、アンケートを取って
満足度が高いとか低いとかだけで終わっていないだろうか?
「相関係数」でピンと来ない場合は、要注意だ。
アンケートを活用して、顧客満足度(CS)を上げるには・・・
*まずは、アンケートの目的から
お施主様アンケートは、大きく分けて次の2種類がある。
◇社外向け
◇社内向け
<社外向け>
・目的:自社がお施主様からどんなに支持されているか、喜ばれているかを社外に見せるため。
・時期:お施主様の気持ちが一番盛り上がっている「契約時」や「上棟時」、
笑顔が撮りやすい「引渡日」にアンケートを取得する。
・使い方:自社WEBサイトや店舗内に写真付きで掲示して、
OBのお客様から太鼓判を貰っていることを営業ツールにする。
お客様からの喜びの声は、間接部門で働く社員のモチベーションアップにも繋がる。
・注意事項:プラスの声を集めるのが目的なので、改善に役立つような情報は得られない。
<社内向け>
・目的:自社の改善に役立てるため、会社にとって都合の悪い情報も集めるためのもの。
・時期:引渡後~3ヶ月程度。半年点検時や1年後に行う会社もあるが、
あまり遅いと施工の不満は覚えていても、営業への不満は忘れてしまっていることがある。
・使い方:アンケートを分析して、業務改善に役立てる。
お客様の不満を具体的な改善策につなげる。
・注意事項:前述の社外向けよりも回収率が下がる傾向にあるので、回収率を上げる努力が必要。
また、不満を書かせることで、お施主様の中でも問題が顕在化するので
回収したアンケートは放っておかず、誠実な対応が必要。
*平均値を計算して満足していないか
社外向けの使い方(WEBサイトへの掲載等)は、別の機会にするとして、
ここでは社内向けアンケートの分析方法を紹介する。
まずは、下表を見てもらいたい。
A社とB社では、平均値だけを見ると3.15で同じである。
しかし、満足率(非常に満足・満足と回答した人数の割合)で見ると、
A社は45%、B社は20%と大きな違いがある。
これを平均値だけで上がった下がったと見ていると、判断を間違う。
社内改善のために行うアンケートの場合は、いかに満足の人を増やすか(満足率UP)、
不満の人を減らすか(不満率Down)ということを考えるための調査である。
見るべきは平均値ではなく、満足率である。
*何を改善するのが、最も効果的なのか
下の表は、お施主様アンケートで質問した10個の項目を満足度の高いものから順に並べたものだ。
「ICの対応」の満足度が高く、「モデルハウス」の満足度が低いのが分かる。
ここで直ぐに「モデルハウス」の改善を指示するのでは、性急に過ぎる。
その項目が、全体の総合評価に与える影響を見る必要がある。
そのために、総合評価と個別項目の満足度(IC対応、モデルハウス等)との相関性を求める。
相関係数を求めることで、総合評価と相関性が高い項目、
つまり、総合的な満足度の改善にあたり重要度の高い項目を抽出することができる。
表の「重要度」は、相関係数の値を示しており、この数値が高いほど総合評価に影響を及ぼす傾向が強い。
「モデルハウス」は、満足度は低いが重要度も低いため、改善を急がなくても良いという判断になる。急いで改善したところで、さほど総合的な満足度は上がらないからである。
これをグラフにすると(グラフを見やすいように偏差値に変換)、次のようになる。
<CS分析>
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・右上(第1象限)は、重要度も満足度も高いエリア=重点維持項目(差別化要素として維持強化すべき)
・左上(第2象限)は、重要度は低いが満足度は高いエリア=維持項目
・左下(第3象限)は、重要度も満足度も低いエリア=改善項目(但し優先順位は低い)
・右下(第4象限)は、重要度が高いにもかかわらず満足度が低いエリア=重点改善項目(優先的に改善すべき)
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こうしてグラフに表すと、「報連相」「工事の対応」を急いで改善する必要が視覚的に分かるだろう。
お客様アンケートの平均値を上げるために闇雲に頑張るのではなく、
きちんと分析することで、取り組むべき改善策が見えてくる。
さらなる分析として、これを支店別や担当者別、価格別、年収別などで行ってみることも重要だ。
自社のターゲットが何を重要視しているかを見極めることができてこそ、お施主様アンケートが活きてくる。
さあ、さっそく自社のアンケートを見直してみよう。