工務店が必要とするのは、「すべき」ではなく「したい」という人材だ。

住宅会社に必要な人材

優等生が増えると、会社が停滞するのはなぜか。
会社を保守化せずに成長を続けるためには、何が必要なのか。

 

◆優秀な「すべき」人材
会社が成長すると、徐々に優秀な人材が入社してくるようになる。
累積する受注棟数に比例して、優秀な社員の採用も増えてくるものだ。
知名度の低かった創業時には採用できなかった人材を獲得できることは、
非常に喜ばしいことであり、更なる成長に欠かせない要素となる。

しかし一方で、採用した優秀な人材が会社の成長を止めることもある。
一般的に優秀とされる人材は、論理的思考力がある。
データや状況を分析した上でロジカルに答えを導き出し「~すべき」であると結論づける。
この「すべき」が強くなりすぎると、会社は保守化していき、成長が止まるのだ。

様々なデータに基づいて論理的に導き出された結論は、一見すると正しい結論のように思える。
しかし、経営は生ものであり、経済環境は常に変化している。
こう「すべき」という100%の正解はないのが当然。
にもかかわらず、「すべき」に会社全体が引きずられると、新しいことを避ける社風が出来上がる。

特に、管理・財務・経理部門に優秀な「すべき」人材が入社し、
社長がそれに引っ張られると会社は縮小均衡に陥りやすい。

論理的思考力に長けた「すべき」人材の意見だけに与すると、
不確かな要素が大きい新規の取り組みは全て「すべき」でないものとなる。
その結果、失敗しない確率を高めることは出来るが、大きく成功する確率は低くなる。

 

◆「したい」人材が会社を伸ばす
対照的に、論理的思考力はそれほどでもないが、強い情熱を持つ「したい」人材は貴重である。
例えば、日本の少子化問題や消費税増税後の住宅需要の縮小を見越して、
発展を続ける東南アジアへの進出が中小の住宅会社でも検討されることがある。

そこで、ミャンマーに進出することに決定し、社員を現地に派遣することになったとする。
その際、次のどちらの人材がミャンマーで成功を収めることが出来るだろうか。

「日本企業の進出が進み、東南アジアの中でも急速に発展する余地が大きく、
将来的に住宅需要が伸びる可能性が高いので当社はミャンマーに進出すべきだ」

「日本で培った住宅の技術があれば絶対にミャンマー人の住環境を豊かにすることが出来る。何としても成功させたい」

あなたなら、どちらの社員を派遣するだろう。
これまで実施したことのない事業や急成長を成し遂げるためには、
「すべき」かどうかではなく「したい」という情熱が必要である。
何が何でも「したい」という想いがあれば、事業は前進する。

赤ん坊は「立つべきだ」と考えて、ハイハイから二足歩行になるのではない。
そこにあるのは「立ちたい」という情熱だけである。

経営も同じ。経営者のこう「したい」という気持ちが強ければ、周囲に協力者が現れ、前進していく。
逆に「すべき」だと考えたものは、さほど上手くは行かない。

 

◆世界を動かすもの、それは…
思考実験的に、住宅以外の事業で「したい」と思うビジネスを考えてみて欲しい。
いきなりでは思いつかないだろうが、何かのタイミングで、ビジネスアイディアが浮かんだ経験は誰にでもあるだろう。

急速に成長するビジネスには、誰もが思いつかなかった新規性がある。
裏を返せば、その事業に関しては自分も含めて世界中の誰もが初心者であり、素人であるということでもある。

素人の行なう事業なのだから、論理的思考力の強い人からすると「すべき」でないという結論になることが多いだろう。
だからこそ、「したい」という想いが新規事業には大切なのである。

先行事例や見本がない中で進むからには、壁にぶち当たり、多くの失敗もする。
その度に「すべき」なのかを考えていたら何も成すことは出来ない。
絶対に「したい」という情熱があるから、幾度の失敗を乗り越えて、事業を急成長させられるのである。

さて、何か良いビジネスアイディアは浮かんだだろうか。
日常の住宅経営における「すべき」かどうかの判断から少し離れて考えると、ワクワクするような「したい」アイディアが浮かぶはずだ。

その気持ちのまま、ぜひ創業した頃や会社を承継した頃のことを思い出してほしい。
「儲けるために○棟受注すべき」という発想から離れ、
社長になった時に考えていた「自分がしたい家づくり」は、どんなものだっただろうか。

今、あの頃考えていた理想の住宅会社になっているだろうか?

 

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ALEX

住宅会社・工務店の経営コンサルタント。経営・人事・財務など、中小企業の経営面でのアドバイスを行う。

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