市場開拓で売上拡大
売上が順調に伸びていたり、既存エリアでの成長が鈍化し始めたりすると、新しいエリアへと拡大したくなるのは自然の流れだ。住宅会社の場合、隣の市場に進出するのは比較的簡単だ。極端な話、モデルハウスを1棟建てるだけで進出は完了する。後は広告を出して集客し、初期の施工は既存エリアから業者を連れて行けば何とかなる。
進出自体は簡単だが、成功するのは簡単ではない。新エリアに進出したものの年間数棟しか建たずに、サテライトオフィス化している会社も少なくない。その理由は多岐に亘るが、1番大きな要因は「強みのポータビリティ」にある。
強みのポータビリティ
市場開拓で売上拡大を目指す際に注目しなければならない「強みのポータビリティ」について考える。新しいエリアに進出するにあたっては、現在持っている「強み」を持ち運べるか否かがポイントになってくる。
例えば、安価な在来木造住宅で成長した某大手ハウスメーカーは、坪〇万円という強い商品を持っていた。これは持ち運びが可能な強みだ。ショールーム1箇所あたり100~150棟売れる仕組みも強みで、こちらも持ち運び可能であり、全国展開は問題ない。
例えば、「土地の仕入れ力がある」という強み。その強みが、創業以来の地域での人脈や信用、現商圏内での棟数実績を基にしている場合は、新エリアに持ち運ぶことは困難だ。その強みは無いものとして考えねばならない。土地の仕入れ力がなくても、自社の営業は今まで通り受注できるだろうか…無理だろう。
同じ強みでも、その力の源泉が違う場合もある。「社名の認知度・ブランド」が強みだとする。そのブランドが、現商圏で何十年も続いているという事に根差しているのであれば、ポータビリティは無い。他の商圏に持って行った時には、他県で数十年の歴史というのは、マイナスはないが大きなプラスにもならない。同じブランドでも、マーケティングとして意図的に作り上げられたブランドであれば、ポータビリティはある。その強みは、認知度やブランそのものではなく、その「ブランドを作り上げる力」にあるからだ。
自社の強みが持ち運べるか否か、それを見極めることが、新エリアへの進出が成功する一つ目の鍵となる。なお、ポータビリティのある強みが、社内の誰にでも持ち運びできるようなものなら、独立されないように気を付けた方が良い。
強みを持ち込んだ先
持ち運べる強みが特定できたなら、次はその強みが受け入れられるエリアかどうかを確認する。
例えば、北海道の住宅会社で「高気密高断熱」が最大の強みだとする。設計も職人も揃えており、ポータビリティもあるとしても、他府県では簡単には受け入れられないだろう。高気密高断熱を最優先で求めている施主が少ないからだ。持ち運んだ強みが、強みとして機能するためには、その強みを受け入れてくれるかを考慮しなければならない。
前述の某大手ハウスメーカーは、東北や北海道へ進出する頃には、勢いを失った。温暖なエリアで培った安価な商品は、そのままでは寒冷地に使えず、地域に合わせてカスタマイズすることで標準性を失い、追加の設備により価格帯も競争力が削がれた。強みにポータビリティが合っても、新しいエリアが受け入れてくれるとは限らない。
更に、競合も確認しておこう。自社の持ち込む強みを持っている競合はいないだろうか。競合がいるならば、勝てるかどうかを慎重に見ておこう。同じ強みを持つ競合がない場合も簡単に喜んではいけない。そもそもニーズがないかも知れない。エリアにない商品(強み)があることだけで成功するのであれば、フランチャイズに加盟している企業は全て成功するだろう。
商圏を拡大する際に検討しなければならないポータビリティについて述べてきた。
その時の勢いとか、そのエリア出身の社員がいるからとか、隣町の方が人口が多いからという理由で進出を決めがちだ。進出を決定する前に、自社について冷静に見つめ直す時間が必要だ。
なお、これまで新規エリアに進出したことのない企業は財務面でも注意が必要だ。現在の自社の利益率は、1エリア1店舗で経営しているから得られている利益率だ。エリアを拡大すれば、間違いなく経営効率は落ちる。売上は拡大できても、利益率が下がることは認識しておこう。
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