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AI時代に生き残るサービス産業についての一考察

『産業革命』につながるAIの発展

 昨今はchatGPTやcopilotなどに代表されるAIが盛んに開発されている。かつて第三次産業が大きく成長した1990年代~2000年代初頭、PCとインターネット、そして携帯電話が幅広く普及したことを受け、人々の生活環境は段階があったものの大きく変わっていき、サービス産業分野は大きく発展した。これを第3次産業革命という。いわゆるIT革命は、歴史の教科書に名を遺す、第1次産業革命(蒸気機関の発明、工場生産の開始)や、第2次産業革命(鉄道、電力、石油を中心とした技術革新)などと肩を並べるまでに発展した。では、今後、AIが爆発的に発達したときには、どのような『革命』が起き、どのような『サービス』が生き残るのだろうか。

ポイントはサービスの『感情的な価値』

 サービスは、有形性の要素と無形性の要素が合わさって構成される。無形の価値を伝えるために有形要素が周囲を支えているような格好だ。例えば、スターバックスでは季節ごとにタンブラーの販売を行うが、それはあくまでスターバックスに来るためのきっかけの一つを提供しているにすぎず、本来のサービス価値は、スターバックスをサードプレイスとして利用してもらって、その中でカフェそのもののデザインやスタッフによる空間づくりの心地よさを体験するという『感情的な価値』にある。

 このようなサービスは、AIが苦手とする共感力・感情の深い理解、創造性と芸術性、文化的・社会的な文脈の理解
、人とのふれあいなどからしか織りなせない。AIは感情を模倣することが可能でも、真の共感や人間同士の「心のつながり」を理解できるとは言えないし、人間のように「無から有を生む」創造力はない。だから、新たな社会的意味のあるサービスを生み出すことは難しいし、まして実態がないので触れ合うことはできない。つまり、人間の心を揺さぶるような、感情的な価値の高いサービスは、人間にしか生み出すことも提供することもできないのである。

顧客の歓びを生む『エクセレントサービス』

 上述のような、サービスを受けた顧客が歓びを覚えるような、感情的な価値の高いサービスを、エクセレントサービスという。個別性が高く、驚きを覚えるほどの差別化されたサービスのことを指す。どんなに機械や電子に『手段』の部分を代替したとしても、顧客の歓び(カスタマーデライト)に繋がるような『エクセレントサービス』は、本当の意味で『感情的な価値』を理解することができる人間にしか生み出せない。つまり、より洗練され、人の心を揺さぶるような経験価値の高いサービスは、AIには生み出せない。人間同士のコミュニティの中でしか生みだすことができないものなのだ。

AI時代に生き残るサービス産業とは

 では具体的に、AI時代に生き残るサービス産業はどのようなものなのであろうか。条件は3つだ。①人間と人間との直接的なコミュニケーションが介在していること、②人間の文化的な感性から生み出されるものであること、③顧客の心が満たされるものであることである。これは、第3次産業に携わっているサービス従事者なら、当たり前のことであると思うかもしれない。しかし、このエクセレントサービスのレベル感は、シンプルで標準化されていて構造的なサービスを指していない。卓越した顧客体験を生み、顧客に歓びを与え、顧客にまた利用したいと思わせる(ロイヤルティを高める)ようなサービスこそが、生き残ることができるサービスである。

 工務店・住宅会社では、どうか。家を建てることは人間にしかできない。しかし、それだけなら、どの施工会社でもできてしまう。他社と差別化され、選ばれるサービスを作り上げていくにあたって肝心なのは、家づくりという有形要素が内包する無形要素、すなわち『人間にしか生み出せない感情的価値』をいかにして顧客と共有するかだ。新年の課題に、その方法をぜひ検討してみていただければ幸いである。

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SAFFY

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工務店・住宅会社専門のWEBコンサルタント。 集客・反響数アップのためになる『ワザ』や、営業に役立つ経営の知識をカンタンにわかりやすくご紹介します。

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