最近、年齢や世代による違いが減っていると感じないだろうか。生活、趣味、言葉遣い、年相応のイメージが変わってきた。
「消齢化」という言葉が、近年注目を集めている。簡単に言うと「生活者の意識や好み、価値観などについて、年齢による違いが小さくなる現象のことで、博報堂生活総合研究所が名づけた。
20年前、30年前と比べて、生活の様々な領域で、生活者の意識や好み、価値観などの、年代による違いが小さくなっているように感じることはないだろうか。 「若者らしさ」や「年相応」のような、年代や年齢に紐づいた生活者の特徴が徐々に薄らいでいき消えていくと、同研究所は分析する。
同研究所では、生活定点調査を2年に1度実施しており、1992年から2022年までの30年分のデータから、生活者の意識や欲求が長期間でどのように変化したかを分析。図1は、年代による回答の差が年々小さくなっていることを示したものの1つだ。
「ものやサービスの購入についてこだわる方だ」という消費に関する意識について、20・30代では30年前よりもこだわるという回答が減少している一方で、40~60代では増加している。全体の平均値では30年間ほどんど変化がないが、年代間の違いはどんどん小さくなっている。
366の調査項目を30年間の変化で見ると、年代による違いが大きくなっているのが僅か7項目なのに対し、小さくなっているのは実に70項目。
ターゲットが絞りづらい
住まいに関することでも「消齢化」が進んでいるのだろうか。ターゲットを年齢ではなく、ライフスタイルで分類しようという試みは以前からある。釣りを趣味にしている人は、年齢を問わない。スキーもスノーボードも若者だけの趣味では無くなった。家を建てる層を年齢ではなく、趣味で区切ると違った見せ方ができる。車が趣味の人は、20代でも60代でもビルトインガレージのある住宅商品に憧れるかもしれない。
少しずつライフスタイル重視の住宅会社も増えているが、多くの住宅会社では、夫が働き、妻が専業主婦かパート、子供が小学校に入る前というターゲット層から抜け切れていないのではないか。既に、専業主婦世帯は、共働き世帯の半数以下になっているにも関わらずだ(図2)
「脱・子育て世代」の家づくり
住宅業界は、子育て世代がメインターゲットであったが、今後の少子化も考慮すると、それ以外の世帯に住宅を売ることを積極的に考えた方が良いかも知れない。「脱・子育て世代」だ。
かつて「両親と子供」がいる世帯は、多数派だったが、今は全体の25%に過ぎない(図4)。2人以下で暮らす世帯が、67%を占めているのが現状だ。
少数派である子育て世代を狙う必要はない。2人以下の世帯の方が多数派だ。「消齢化」「脱・子育て世代」をキーワードに、新しい住宅を提案してはどうだろうか。
この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。