本当は怖い、ネット広告

広告代理店任せにした結果

近年は、工務店の広告戦略もネット広告が中心だ。多くの工務店がネット広告を行うようになったため、以前よりも費用対効果は悪くなってきているところもある。ネット広告の効果を上げるために、広告代理店やコンサルタントに依頼する工務店も増えており、専門家に頼むことで十分な効果を実感している人も多いだろう。
一方で、広告代理店に依頼したものの「本当に広告を出しているの？」と疑問に思うほど、効果がないという話も耳にする。

実は、本当に広告が出ていない場合もあるのだ。「そんなバカな」という声も聞こえてきそうだが、そこには業界特有の仕組みがある。

PDFの報告書しか見ていない？

工務店が、広告代理店（又はWEBコンサル等）を通じて、Googleに広告を出すとする。工務店は、広告代理店に①Google広告費と②運用管理費を支払う。①の広告費は、代理店を通じてGoogle支払われる。②の運用管理費は、一般的に広告費の20～30％であり、広告代理店の収入になる。
広告代理店は、Googleが用意した広告の管理画面で、キーワードや予算などを設定して広告を運用する（独自の運用ツールを使う場合もある）。
いずれにしても、管理画面を見れば、どんなキーワードがクリックされ、広告費が何円かが、ほぼリアルタイムで分かる。この管理画面は、工務店と共有することができるので、同じ画面を見ながら、今後の広告戦略を練ることができる。
しかし、多くの広告代理店は管理画面を共有せず、1ヶ月分をまとめたPDFの報告書だけを工務店に渡す。それは、なぜか。

なぜ、管理画面を共有しないのか

工務店側からすると、運用を任せて信頼しているから、管理画面で細かなところを見る必要がないという理由もある。管理画面には、広告代理店がつくるアカウント構造のノウハウが詰まっているため、安易に見せられないという事情もある。
しかしながら、大きな理由としては、管理画面の数字を見られると、PDFで渡している独自の報告書と数値が合わないことがバレるからだ。工務店が払った100万円の広告費が、実際に広告として使われているかは、広告代理店が作成した報告書でしか判断のしようがない。実際には50万円しか広告費に使っていなくても分からないなら、不正をしようとする輩がいてもおかしくない。
更に、広告代理店によっては、広告費と運用管理費を分けずに、合算して広告費を請求する企業もある。そうなると、完全にブラックボックスだ。

うちの広告代理店に限って・・・

広告費を誤魔化すなんて、大胆な不正をする訳がないと思うだろう。この不正が明るみに出た事件がある。しかも、広告代理店大手の電通とトヨタ自動車との間でだ。
トヨタからネット広告の依頼を受けていた電通の不正が発覚したのは、2016年のこと。トヨタから「広告を出稿したにも関わらずその効果が出ていない」との指摘から発覚した。不適切な疑いのある案件は633件にのぼり、金額は合計2億3,000万円。そのうち未掲載にもかかわらず、広告主に請求した額は320万円だった。
大手の電通でもこの有様だ。小規模な広告代理店が利益欲しさに意図的に誤魔化す場合もあれば、管理が適当だったり人員不足で虚偽の報告書を出すケースがあることは、想像に難くないだろう。

不正対策には、簡単な質問で

細かな数値までは見ないにしても、管理画面の共有が大事であることは伝わっただろう。工務店が、管理画面で数値を見ているという認識が広告代理店にあれば、不正は出来ない。とはいえ前述のとおり、管理画面には広告代理店のノウハウが詰まっているから、簡単に共有してくれない場合もある。

まずは気軽に、現在の広告代理店に質問してみよう、「管理画面を共有してくれませんか」と。難しければ、Googleから直接レポートを自動で送る機能があるので（ノウハウ流出はない）、それを依頼しても良い。
いずれも対応しない、慌てるようであれば、かなり怪しいと言わざるを得ない。

不正が起きやすい

どこの工務店も、リフォームや少額追加工事などで工事費を誤魔化す社員や、協力業者からキックバックを貰う監督などへの対応は、ある程度出来ているだろう。
しかし、ネット関連は不正が起きやすい環境のままである。広告代理店側の不正だけでなく、社内のマーケティング担当者が、広告代理店からキックバックを貰っていたという話も聞こえてくる。ネット関連が苦手な経営者だと、報告された数字を信じるしかなく、良く分からないまま担当者任せにして傷が広がってしまう。

まずは、広告代理店に「管理画面を共有してくれませんか」と聞いてみよう。誠実な広告代理店・WEBコンサルタントなのかが分かるシンプルかつ強力な質問だ。