試乗・試食・試着があるなら、「試住」も。
宿泊体験をウリにする会社が増えてきた。昔から宿泊体験を打ち出す会社はあったが、コロナ禍が明けて本格的に再開されているようだ。試乗、試食、試着があるなら、「試住」があっても良い。むしろ高額な住宅を購入するにあたり、試さないのはおかしい!というような謳い文句は、それなりに説得力がある。
施主は、実際の建物の性能や仕様を確認することができ、1泊することで家族で集中して家づくりを考える時間が持てるという良さがある。工務店側も、資料だけでは分かりづらい断熱性能や全館空調などを体感してもらうことで、自社の強みを伝えることができる。
賃貸アパートに住んでいる施主にとっては、現在建てられている高性能の新築住宅は、どんな家でも快適に感じられる。そして、ふかふかのベッドと、飲み放題の冷蔵庫、更には食事代として1人あたり数千円を貰うと、余程のことがなければ、その工務店が気に入ることだろう。
営業プロセス
住宅会社の中には、工場見学、OB宅訪問、宿泊体験を一連の営業プロセスに組み込んで、成約率を上げることに成功している会社もある。宿泊体験を上手に営業プロセスに組み込むことが出来れば効果はある。
但し、これから宿泊体験を始めようという工務店は注意が必要だ。
初回面談から3回以内に、仮申し込みを貰うようなスピード感のある営業プロセスが確立されている場合、宿泊体験は確実に面談から契約までの期間を延ばす方向に働く。
特に、宿泊体験棟が少ない場合、宿泊日程の調整により更にタイムラグが出来る。宿泊希望は土日に偏るため、営業所に1棟しかなければ週1組、月4組しか宿泊体験が出来ない。宿泊体験が評判であれば、尚の事、施主は宿泊してみたいと考えるため、社内で土日の日程確保が競争になる。また、宿泊体験の施主対応には通常の商談よりも手間がかかるため、営業担当者の時間も余計に取られがちである。
確かに宿泊体験者の成約率は高くなるが、宿泊体験しなくても成約になっていた客層まで宿泊させると、全体としての成約数は下がりかねない。
伝えられる強みがあるか
どのように営業プロセスに組み込むかは、各社の営業現場の実態に合わせて調整していくことになるが、同時に宿泊体験で伝えられる強みがあるか否かも検討が必要だ。
断熱気密や空調、床暖房などは、宿泊体験で伝えやすいが、性能以外に強みを持っている会社は工夫が必要だろう。外観の意匠性が強みの会社が、宿泊体験を営業プロセスに組み込んでも成約率は上がらない(意匠だけでなく性能も自信があることを伝えたいなら別だが)。
宿泊体験は、他社でやっているから当社も取り組もうという程度では成功しない。宿泊をすることで伝えられる強みが自社にあること、営業プロセスの一貫性があることを前提に、成約率を高めるためには、相当の試行錯誤が必要だと覚悟して取り組むことが肝要だ。
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