住宅着工戸数の減少が続く中においても、着実に業績を伸ばす企業がある。なぜ、あの企業は業績を伸ばしているのか。そこには「戦略の系統」を意識した経営がある。
あなたの会社は何系?
最近行った床屋・美容室を思い出して欲しい。なぜ、他の店ではなく、その店を選んだのだろうか。そこに自社の戦略を考える上でのヒントがある。戦略を考える際に、自社が「何系」であるかは重要なポイントだ。自社の系統を意識して戦略を考えると、お客様に自社のウリを明確に伝えることができ、正しい打ち手を選択できる。
系統とは、他社との差別化を考える際の軸となるもので「技術系」「効率系」「密着系」の3系統に企業を分類できる。この3系統を分かりやすく理解するために、あなたが最近行った床屋・美容室を思い出してもらったのだが、いかがだろうか。「いつも行っているから」「早いから」「腕がいいから」「ヘアコンテストで優勝した美容師がいるから」「安いから」など様々な理由があがるだろう。
それらの選んだ理由は、(1)腕の良い店(技術系)、(2)早くて安い店(効率系)、(3)馴染みの店(密着系)の3つに分類できる。これは、あなたがお客様の立場で選んだ理由であるが、店側の立場から見ると戦略の系統となる。
「技術系」の店は、常にコンテストに参加したり、特殊な白髪染めの特許を持っていたり、技術力があることをアピールすることで他社との差別化を図っている。有名な美容師がいる店などが該当し、一般に高単価である。
「効率系」の店は、会話を含めて無駄なものを一切排除し、客数を捌くことを重要視する。10分1000円など低価格路線の床屋チェーン店が全国にあるだろう。
「密着系」の店は、顧客との関係づくりが重要であり、「いつもの感じでお願い」という要望に応えられる親密さが肝である。住宅街にある個人営業の店などが該当する。
それぞれの「系」によって、採るべき戦略は変わってくる。広告、店舗の雰囲気、スタッフの対応、提供する技術など、店に関わる全てのことが、一貫して自社の系統からブレない店は強い。
逆に、自分たちが持つ「系」とは相容れないことをする店は迷走しがちだ。例えば、早くて評判の「効率系」の店が、急に肩もみや耳掃除など手厚いサービスを行うようなことだ。そのサービス自体は良いことのように思えても、安さとスピードを期待してきた客にとっては迷惑であるし、待ち時間の延びる客にとっても良いことではない。それらの手厚いサービスは「密着系」の店が行ってこそ価値のあることである。高級家具を会員制で販売する「密着系」の大塚家具がお家騒動の末、「効率系」の代表格であるSPA(製造小売業)のニトリを真似て転落の道を辿ったのは記憶に新しいだろう。
長々と理美容や家具の例を上げて戦略の系統を説明してきたが、この3系統は、どの業種でも当てはまる。無論、住宅業界においても同様だ。
住宅会社・工務店の系統
上述の分類方法で、住宅業界を見るといかがだろうか。
「技術系」では、独自の工法・素材・耐震技術を開発する住宅会社、デザイン能力の高さで勝負する設計事務所などが挙げられる。この場合、広告や販促ツールにおいても自社の技術面での優位性をアピールすることになる。
「効率系」は、ローコスト住宅や建売住宅が該当する。効率系は低価格であることが求められるため、徹底した効率経営の考えが必要である。
「密着系」は、古き良き地元工務店と住宅事業をサービス業と捉える企業が該当する。
住宅業界における「技術系」「効率系」「密着系」が、それぞれ採るべき戦略は異なる。次回は、建物、人材・投資について解説するので、自社が何系かを意識しながら読み進めてもらいたい。
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