プロジェクトX。歴史を共有することで生まれる力。

住宅会社の歴史

自社の歴史を継承することで、「論理」ではなく「物語」によって社員を動機付けできる。
未だ社内に眠っている独自の物語・伝説を活用しよう。

◆口頭伝承を文書に
自社の過去を価値あるものとして継承するためには、「社史編纂室」に任せていてはいけない。
年代順にならんだ会社の歴史は、教科書のようで味気ない。
かつて人気を博したNHKのテレビ番組「プロジェクトX」のようにエンターテイメントの要素が必須だ。

非公式な口頭による伝承を公式な「伝説」として文書に残すプログラムに
「プライドプロジェクト」という1泊2日のプログラムがある。

これは、入社歴の浅い社員を中心にグループをつくり、先輩社員にインタビューしながら情報を集め、
物語を作成していくプログラムである。
社員3~5人のグループで一話を作成するので、30人が参加すると、6~10話の伝説が載った小冊子が出来上がる。

小冊子を作成するにあたり、プロのライターではなく、
社員だけで文章を書くことは大変に思うかも知れないが構成のコツさえ掴めば、
伝説の文章を作成するのは誰でも出来るようになる。
また、物語の文学的な完成度よりも、その制作の過程の方に重要な意義があることは言うまでもない。

このように文書として残した伝説は会社の姿勢を伝えるものとして、
新人採用時の資料にも、中途採用者の研修資料にも使える。
自社の仕事に対する誠実な姿勢が明確に伝わるものに出来上がれば、営業用資料としても使えるだろう。

 

◆理念共有
伝説を文書として残すことによる効果は「3つの共有」にある。

1つ目は「価値観の共有」である。
当社にとって「大切にすべき価値観」は何なのかを明確にすることが出来る。

例えば、基礎を施工した後、図面と数ミリ違うことが分かったとする。
その時に自社はどう対応したのか・・・、工期を優先して黙ったまま施工を続けた会社なのか、
お施主様に謝罪して施工を続けた会社なのか、基礎をゼロからやりなおした会社なのか…。

例えば、サッシの耐火性能に違反が見つかった時の対応はどうしたのか。
大きな災害があった時に、自社で施工した家にどのように対応したか。

過去、様々な場面で「判断」をしてきただろう。同じ事象を前にしても企業によって対応は分かれる。
そこには自社ならではの「判断の基準」があった筈である。
その判断の積み重ねが、自社にとって「大切にすべき価値観」である。

この「大切にすべき価値観」に基づく判断基準が物語を通じて新人にも自然と伝わることで、
社長やベテラン社員が「あり得ない!」と憤るような自社の価値観に合わない行動は無くなるだろう。

2つ目は「意識の共有」である。
意外と社員は「なぜ当社は外断熱なのか」「なぜ化学物質を使わない家なのか」
「なぜ2×4なのか」ということを十分に理解していないことが多い。

ホームページのコンセプトに掲載されていても、その決断に至った背景が分からないと、
社員の腑に落ちていないものだ。
何がキッカケで現在の工法・サービスになっているのか、
その過去を振り返ることで、社内の方向性を再確認できる。
全社員が自社の歴史を知ることにより意識が共有され、チームとしての力を高めることができる。

3つ目は「理念の共有」である。
経営理念をホームページに掲載していても、壁に貼って毎日唱和していても、
事あるごとに訓示を行っても、社員に経営理念を浸透させることは容易でないことは日々実感しているだろう。

経営理念が端的に表れた過去の出来事を物語にすることで、社長の考えが自然と社員に伝わり、
理念が共有されていく。どんなに大事なことも箇条書きでは伝わらない。

そこには物語が必要なのである。

 

◆物語経営
なぜ、社長は良く働くのか。会社の物語を一番よく知っているからであり、
会社の物語と社長自身の物語(人生)の重なりが一番大きいから、というのも答えの一つである。

社員が自分自身の物語と重なっていると感じられるような会社の「物語」が
社員の働く意欲を大いに動機付けることは、社長自身が証明している。

過去を振り返り、会社が何を大切にし、今後どこを目指していくのか、
そもそもの経営理念・存在意義は何かを再確認する作業は、
社員に自分達の会社に対する誇りを想起させる効果がある。

一度、社内の物語を文書化してみては、いかがだろうか。

 

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ALEX

住宅会社・工務店の経営コンサルタント。経営・人事・財務など、中小企業の経営面でのアドバイスを行う。

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