成長している工務店に入社した高学歴で優秀な第三世代の社員(元記事)を、安定した会社だと勘違いさせずに、新たな挑戦に積極的になってもらうためには、どうしたらよいか。その答えが新規事業の創出にある。
◆新しいことへの挑戦
優秀な第三世代を落ち着かせず、変化を当たり前のように受け止めてもらうためには、経営者自らが積極的に事業に変化を起こすことが重要である。分かりやすい例は、新規事業の立ち上げである。
長年、住宅事業だけを行っていると新たな事業を始める気が起きないものだ。不動産やリフォーム事業といった割と近い業種であっても進出を躊躇う経営者は多い。無論、新規事業を始めたからといって簡単に成功するものではないが、他業種に触れることで社内に新たな風を吹き込んだり、思いがけず本業に活かせるアイディアが生まれることも多々ある。
進化論で有名なダーウィンによる「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」という名言をひくまでもなく、事業環境が大きな変化に直面している住宅会社が生き残るためには、変化が必要ではないか。
◆リーン・スタートアップ
新規事業というと重く考えすぎる経営者も多い。商品やサービス、人材などを完璧に揃えてからスタートさせたいと考えはじめると、事業が立ち上がるまでに時間がかかりすぎ、いつの間にか時機を逃してしまう。
「リーン・スタートアップ」という言葉をご存じだろうか。
2008年頃、アメリカの起業家エリック・リース氏が提唱した、起業や新規事業などの立ち上げ(スタートアップ)のためのマネジメント手法のことである。なお、リーンとは「ムダがなく効率的」という意味で、トヨタ生産方式を一般化した「リーン生産方式」のリーンと同意である。
リーン・スタートアップは、企業側の思い込みで顧客にとって無価値な製品やサービスを開発してしまうことに伴う、時間や労力などのムダを排除するための方法論。最低限のコストと短いサイクルで仮説と検証を繰り返しながら、少しずつニーズを探り当てていくもの。元々、IT業界での成功が方法論の出発点になっているため、一般的な事業では適用できないと考えられる部分もあるが、無駄なく構築し、その結果を計測して学習するという「構築-計測-学習」のサイクルを如何に速く回すかというのは、どんな事業形態でも共通の成功法則である。
例えば、新規事業を立ち上げる際に「完璧な商品」が出来てから、事業をスタートしようとする経営者がいるが、リーンスタートアップの考え方では、出来るだけ早く最低限の商品をリリースすることを推奨する。
完璧な商品やサービスが出来てからスタートするというのも一理あるが、果たして「完璧な商品」は、誰にとっての完璧であろうか。商売である以上、その商品やサービスを購入する相手方が必要である。事業が始まっていないということは、その相手方は未だ存在していない。特にこれまで社会に存在していなかったような斬新な商品やサービスであれば尚更である。
まずは、仮説に基づいて新商品やサービスのプロトタイプをつくり、ターゲット向けにリリースして検証し、徐々により良いものに仕上げていく方が現実的であり、立ち上がりやすい。
開発者が「完璧な商品」だと思っていても、購入する側からすると余計な機能が付いていたり、実際に使用する場面では不足している機能があるかも知れない。頭の中で考えているだけでは分からないことは多いもの。「構築-計測-学習」のサイクルを回すことにより、現実的にニーズがある商品やサービスへと成長させることが出来る。
◆リスクを抑えたテスト方法
リーン・スタートアップなどと大上段に構えなくても、新規事業にトライアンドエラーは必須である。当社がオススメする新規事業のテスト方法は、Webを活用したものである。
まずは、その事業に関連するキーワードが日本中で検索されている回数を把握する。検索回数は、その商品やサービスに対する世間の関心の高さでもあり、特に「悩み」「解決方法」などのキーワードと一緒に検索されているのであれば、有望である。新規事業が解決策を提示できるものであれば、その潜在的な顧客層を掴むことが出来る。
次に、その事業のWebサイトを立ち上げ、プレスリリースとネット広告を実行する。これにより、実際の反響を計測することで、事業の可能性を予測出来るだろう。何も反響が無ければ、そっとWebサイトを閉じよう…。
何かのビジネスを立ち上げる時に、いきなり実際の店舗を構えたり、工場を新設するのは無謀である。Webを使ってリスクを抑えながら、事業として可能性があるかどうかをテストして社内に新たな風を起こそう。それが、安定志向の第三世代社員を新たな挑戦に向かわせるだろう。
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