海外に行きたくなった時に読みたい「住宅会社の海外進出」

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住宅会社の海外進出は成功するのか?

日本の少子高齢化が加速し、国内の住宅市場が縮小することが見えている中
海外進出を模索する経営者も増えている。戸建住宅は国によって法制度や販売方法等が異なるため
海外展開は難しいと考えられてきたが、最近はどうだろうか?

*国内住宅市場の将来

2016年度の一戸建て着工戸数は、433,727戸である。
消費税増税前の駆け込み需要の反動減から回復しつつも、20年前の55%程度に止まっている。

住宅着工

野村総研の予測では、2030年度にはマンション等も含めた新設住宅着工戸数全体で
約55万戸に減少する見込みである。

住宅着工予測

国内の住宅市場が縮小していく予想に異論はないだろう。日本の総人口は既に減少に転じており、
2020年からは世帯数も減少することが予測されているため、大量の移民でも受け入れない限りは
確実に住宅市場は縮小する。そんな背景から、大手ハウスメーカーは海外に目を向けている。

*大手の海外進出事例

*大和ハウス工業

大手住宅メーカーで、最も海外進出国が多いのが大和ハウス工業。
2016年3月期の海外売上は、約747億円(中国222億円、メキシコ174億円、ASEAN153億円、カタール49億円、
豪州38億円、米国17億円、その他94億円)である。
ただ、全体の売上高3兆1,929億円に占める割合としては、2.3%に過ぎない。

近年の動きとしては、マレーシア最大手デベロッパーのサンウェイ社と提携し
2015年から戸建住宅の分譲販売を開始。ASEAN諸国の中では唯一、外国人が戸建住宅を所有できるマレーシアは
戸建住宅のニーズがある。
とはいえ、販売予定戸数は僅か100戸であり、海外事業の柱にはならない。

*住友林業

ハウスメーカーで、最も海外売上比率が高いのが住友林業。
2017年3月期の海外売上は、2,479億円。全体の売上高1兆1,133億円に占める割合は、21%に上る。

米国における住宅販売棟数(2017年3月期)は、4,686棟。豪州は2,512棟の規模である。
豪州では、2013年に連結子会社化したHenley社に加え、2016年にはWisdom社(年間400棟規模)も
連結子会社化している。

住友林業が海外で強いのは、全体売上の37%を占める木材建材事業があることによる。
世界から木材・建材を仕入れる力があるがゆえに、供給先である海外の住宅会社を買収することで、
住宅部門の海外比率を高めることができている。無理に「日本式」の住宅を輸出する必要がない。

 

*セキスイハイム

積水化学は、タイの建材大手と合弁で「SCGハイム」を展開している。
独自のユニット工法を、そのままタイに持ち込んだことが特徴である。2009年にタイに進出。
年間1,000棟の生産能力を持つ工場をタイに建設した。
ただ、2014年の年間販売戸数は約160棟の実績で、2021年には年間1,000棟・売上300億円という目標だ。

*へーベルハウス

最近では、旭化成ホームズグループも海外事業に力を入れ始めた。
2017年8月に、豪州で戸建住宅の建設・販売を行うMcDonald Jones社の株式40%を取得した旨を発表し、
戸建住宅の海外進出を打ち出した。
なお、McDonald Jones社は年間棟数1,800棟の企業であり、「ヘーベルハウス」を売るわけではないようだ。

*オーストラリアの住宅市場

オーストラリアは、大和ハウス、住友林業やヘーベルハウスだけではなく、
積水ハウスやミサワホームも進出しており、注目が集まる市場だ。

オーストラリアでは、人口増による需要増と中国からの投資目的の購入増により住宅価格が高騰している。
日経の記事(2017/8/16)によると、シドニーの住宅価格指数は過去5年で約70%も上昇。
2015年7月~2016年6月に豪外国投資審査委員会(FIRB)が認可した中国からの不動産への投資額(含商業用)は
319億豪ドルに上り、5年前の7.6倍に膨らんだという。

外国人の投資規制が始まったようだが、景気拡大と人口増が続くオーストラリアの住宅市場は
日本企業にとって進出を検討しやすい環境にある。

 

*中小の住宅会社は海外進出すべきか

さて、大手ハウスメーカーの海外進出事例を見てきたが、中小の住宅会社は海外進出すべきだろうか。

現時点では、海外進出すべき理由はない。

前述の大手ハウスメーカーでも成功しているのは、住友林業のように「日本の戸建住宅」を売らずに
現地で成功している企業を買収する方式である。

タイに日本式のプレハブ住宅で進出したセキスイハイムが成功しつつあるものの、規模は小さい。
日本の品質・デザインに拘っても売れず、現地化しすぎると現地企業と大差ない状態に陥る。

日本国内で、在来工法や2×4工法で家を建ててきた工務店・中小ビルダーが
どんな「強み」を海外に持っていけるだろうか。

新たな市場に進出するときは、持っていける何らかの「強み」がないと厳しい。
ゼロから始めて勝てるほど、どの市場も甘くない。

日本式の住宅を海外で展開しようと考えている方は、一度立ち止まって冷静に考えよう。
自社は何の「強み」を持っていけるだろうかと。

※なお、日本式の住宅で海外進出することには賛成しないが、海外進出を図ろうとする姿勢には大賛成である。
その場合は、戸建住宅そのものではなく、複数社での進出や周辺事業など少し角度を変えるのがオススメだ。

海外進出を考える社長には、まずは、隣の県への進出をオススメしたい。
初めて県をまたぐ時には、全く違う市場環境に戸惑い、これまでの成功法則が通じないことを痛感できるだろう。
海外進出の検討は、それからでも遅くはない。

 

 

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この記事の著者

ALEX

住宅会社・工務店の経営コンサルタント。経営・人事・財務など、中小企業の経営面でのアドバイスを行う。

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