工務店社員の経営感覚を高めるために、何か方法はないだろうか。

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◆経営感覚の高め方

社員の経営感覚を高めるには、数字に対する意識を高めることが重要である。
そのためには、1)お金の出所、2)全体の数字、3)自分の仕事、4)給与連動、
といった順番で理解度を高めると良い。

まずは、1)お金の出所を再確認するところからである。
ぜひ、自社の社員に、会社にどのくらいの現預金があると思うか訊いてみて欲しい。
ほとんどの会社の社員が、戸惑いを見せるだろう。
社員は何となく会社の金庫には「多くのお金」が入っているものだと、ぼんやりと思っている。
給与の遅配でもしていない限りは。

ここで理解させることは、いつでも会社の金庫にお金が自然と湧いてくるのではなく、
「お金はお客様からしか生まれない」ということである。

当たり前の話なのであるが、会社の規模が大きくなると忘れがちになる。
建てた家に満足したお客様がお金を払うから、会社の金庫にお金が入る。

それ以外の方法でお金が入るのは借金である。
わざわざ「顧客満足」などと言わねばならないのは、お金の源泉を社員が忘れているからである。
社員の給料を払っているのは、社長ではなく、お客様なのである。
満足しないお客様は、お金を払わない(=家を建てない)のであるから、給与の出所がない。

満足するお客様が増えることは、給与の出所を増えることなのである。
これを社員が認識することが第一歩である。

次に、2)全体の数字を知ることである。
社員に次の事を試してみてもらいたい。紙に1つの円を描き、その円全体を会社の売上高として、
原価・人件費・販管費・営業利益の比率に分けて円グラフを完成させてもらうという簡単なものだ。
これが意外と出来ない。

実際の数字の何倍もの営業利益率になることが多々ある。
ぜひ、自社の社員が考えている会社の損益イメージを見てもらいたい。

社員の考えている会社の数字と実態はかけ離れていることが多い。
これは、多くの中小企業が決算数字を社員に公開していない、
もしくは公開しても理解させていないことに原因がある。

なお、経営数字を共有することで、業績を向上させる手法を「オープンブック・マネジメント」という。
会社全体の数字を把握した後は、それが、3)自分の仕事とどのように連動しているかを理解する段階である。
会社の数字が分かってくると、自分の仕事が会社業績にどれほど価値があるのか分かってくる。
釘一本のムダを無くすことの大切さが理解できるようになれば、大きな進歩である。

例えば、1棟単価2,500万円で年間50棟を完工する住宅会社があるとする。
現場監督が数字を理解し、1棟あたり1%のコストダウンを行うと、1棟で25万円の利益が生まれ、
50棟で1,250万円の利益になる。

100円の部材を99円で買う、100日かかる工期を99日で終わらせるといった僅か1%のコストダウンで、
年間1,250万円もの差が出る。その利益増加分で、積算・発注業務に1人増員して工務部の業務量を減らそうか、
それともボーナスで還元しようか、という話が出来るようになる。

それから、4)給与連動も考えられる段階になる。経営者にとって、会社の業績がきわめて重要なのは、
生活に直結しているからでもある。
会社業績と社員の利害が一致していれば、社員にも同様の感覚が生まれる。
会社に利益をもたらす動きをしても何も見返りがないのでは、社員の持続的な貢献は見込めない。
会社業績に連動した賞与制度を整えることは、社員と会社の関係をより強めるだろう。

なお、給与との連動は余り強くやり過ぎない方が良い。
あまりに会社業績と自分の給与の連動を意識しすぎると、悪影響もある。
「この見込客を受注したら○万円」と、頭の上に¥マークがついているような営業マンには頼みたくないものだ。

何よりも、上記1)お金の出所に書いたように、お客様の満足が無ければ何にもならないのだから。

◆ゲームで実感
上記のようなことを、座学で説明して社員に理解してもらうのは、困難である。
そこで、簡単なビジネスゲームをオススメする。

1チーム3~5人として、5チームで行う。なお、参加人数が少なければ、1チーム1~2人でも良い。
このチームそれぞれが、1つの会社として半年間の経営を行い、決算数字で競い合うというもの。

儲かっても資金ショートを起こしたり、在庫を抱えて安値で販売せざるを得なくなったり…
経営者の立場を追体験することで、経営感覚を養うことができる。

小難しい話は苦手な社員でも、自分がゲームに参加しながらであれば感覚として分かってくる。
このゲームの後に、会社の決算数字を見せると、より理解が深まることは言うまでもない。
実際の経営もゲームだ、と言ってしまうと真剣に経営している社長が怒りそうだが、
ある意味で社員には経営をゲームとして理解してもらうことも必要だ。

あなたの会社が、年間に必要とする利益額は決まっているのであるから、
社員には、それを稼ぎ出すゲームをやっていると考えてもらえば良い。
売上を上げて達成するか、コストを下げて達成するか…社員に考えさせ、目標を達成できたら賞与がもらえる。
そんなゲームである。
経営は、眉間にシワを寄せていれば儲かるというものではない(それで儲かるなら喜んでシワを寄せるが)。

時には、社員にゲームを楽しむような感覚で会社の数字を理解してもらい、
笑顔でお客さんに接してもらう環境をつくることが肝要である。

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ALEX

住宅会社・工務店の経営コンサルタント。経営・人事・財務など、中小企業の経営面でのアドバイスを行う。

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