シニア世代に高齢者用リフォームだけを提案していたのではもったいない。

シニア世代の住宅

人口も所得も減少傾向が続く「子育て世代」
住宅を建てる適齢期の世代に大きな期待は出来ない今、
伸び続けるシニア世代の購買力を住宅市場に取り込めないだろうか。

◆シニア消費100兆円
数年前、第一生命経済研究所が、60歳以上のシニア世代の年間消費支出が前年比2.4%増加し、
2011年に初めて100兆円を突破したと発表して話題になった。これは、個人消費全体の44%に達している。

日本の高齢化率は年々高まっており、65歳以上の高齢者人口は3296万人(2014年9月15日現在推計)、
4人に1人が高齢者であり、60代以上の人口は約3人に1人。50代以上になると、日本人の約2人に1人である。

さらに75歳以上人口に注目してみると、昭和25年には1.3%だったものが、2014年には12.5%となり、
実に8人に1人が75歳以上となっている。

住宅業界の主戦場は、20~30代の子育て世代であったが、団塊ジュニア、ポスト団塊ジュニアの需要は一巡。
住宅を建てる子育て世代の新たなボリュームゾーンは、今後はない。
消費税増税前の駆け込みだけが、住宅業界最後の需要の塊である。

新築住宅をメインとする企業のターゲットからは外れていた「シニア世代」だが、
手すりやバリアフリーといった高齢者用リフォームだけに止まらず、
個人消費全体の半分に迫る勢いのシニア世代需要を取り込むことは出来ないだろうか。

 

◆第二次「団塊世代」商戦
2012年が第二次団塊世代商戦が始まった年であったといわれる。
団塊世代(1947~1949年生まれ)の年長者・ファーストランナーが60歳を迎えた2007年にも
様々なマーケティングが試されたものの、定年退職年齢の引き上げ等により団塊世代商戦は盛り上がりに欠けた。

団塊世代の多くが再雇用され、本当に離職するまでの期間(=リタイアモラトリアム)を終え、
ファーストランナーが65歳を迎える2012年が、本格的なシニア世代の消費が勢いづく最初の年となった。

シニア世代の消費が勢いづくとともに、常識を覆すようなデータも出ている。
以下、村田裕之著「シニアシフトの衝撃」(ダイヤモンド社)からの引用である。

皆さんは「紙おむつは赤ちゃん用」だと思っていないだろうか?赤ちゃん用の紙おむつ市場は、2011年でほぼ1,400億円。ところが、2012年中に大人用の紙おむつ市場が1,500億円に達し、ついに赤ちゃん用を逆転する見通しなのだ。
日本での紙おむつの生産は…(中略)1985年以降、年率30%もの急成長を遂げた。しかしその後は、布おむつからの転換が落ち着いたことに加え、少子化の影響で成長は鈍化し、1995年からは減少基調となった。
一方、大人用はここ数年、市場全体が年率5%程度で成長を続けている。

常識に捉われていると、急速なシニアシフトによる市場環境の変化を見誤る。
住宅業界においても、もっとシニア世代を取り込める可能性があるのではないか。

 

◆切り口を変える
住宅業界の関係者からは「住宅市場は既に成熟している」「家を建てる子育て世代需要はもうない」
「住宅関連は衰退産業なので」という言葉を耳にするが、本当にそうだろうか。

かつてアイスクリーム市場の販売額は、猛暑だった1994年の4,296億円をピークに下降線をたどり、
2003年には23%減の約3,300億円の市場にまで縮小した。

住宅業界と同様に氷菓業界が「アイスクリーム市場は既に成熟している」
「少子化でアイスを食べる子供の数が減っている」という思考で止まっていたら、
氷菓業界は既に衰退していただろう。

今ではコンビニの棚を覗くとプレミアム・アイスクリーム市場が確立していることを確認できる。
確かに少子化により従来の子供をターゲットとした低価格アイスクリーム市場は縮小傾向にあるが、
ターゲットを大人に絞り込んだハーゲンダッツのような高価格帯商品の市場は拡大し、
類似商品による棚の奪い合いが起きている程である。
市場の切り口を変えることによって、衰退産業が成長産業の輝きを放つことは十分にあり得る。

住宅業界に置き換えて考える。
「結婚や子育てを機に新築住宅を建てる人」という市場は確実に減少する。
しかし「シニア世代の再婚による住宅需要」「退職後の趣味を活かすコンパクトな平屋需要」
「子供が巣立った後の減築需要」「リバースモーゲージを使った住み替え需要」などなど、
切り口を変えることで新たな建築需要は生まれる。

◆シニア世代の資産
しかし、新築住宅を専門に手掛ける住宅会社の方は「新たな市場」というものに関心が薄い。
少額リフォームや中古住宅、サ高住が今後に可能性があると言われても、
1棟受注すると数千万になる新築住宅市場から頭を切り替えられない。

せめて、シニア世代のお金を引き出すことに関心を持ってみてはどうか。
家を建てたい子育て世代の所得水準は減少傾向にあるのはご存じの通り。

国税庁の民間給与実態統計調査(2014年9月)によると、30~34歳の平均給与(男女)は
1996年には年441万円であったが、この17年間で57万円減少し、2013年は年384万円に止まる。
将来の住宅需要を担う20~24歳の年収も246万円(2013年)へと減少しており、
給与所得の減少傾向に歯止めはかからない。
ちなみに、厚労省による平均年金モデルでは、夫婦合わせた年金額は年261万である。

若年層の低所得傾向が続くため、親世代・祖父母世代から資金を援助してもらうように促す国の施策もある。
親などから住宅資金の援助を受ける場合、一定額まで贈与税は非課税となる。
2015年の非課税枠は1,000万円だが、省エネや耐震基準を満たすと1,500万円になり
暦年課税であれば110万円の基礎控除と併せて1,610万円までは税金がかからない。
相続時精算課税を選択した場合は、特別控除の2,500万円を併用することも可能である。

更に消費税率10%になった後(2016年10月~2017年9月)は、
非課税枠と相続時精算課税で最大5,500万円まで、贈与時は非課税となる。

住宅の贈与税に関する情報は、意外と施主も営業マンも知らない。
贈与税の非課税枠を的確にアドバイス出来ていたら、予算が1,000万増額になっていたなんてこともあるだろう。

また、現金の援助だけではない。若年層の親世代、祖父母世代の持家率は高い。
しかし、その持家を相続する子供や孫の数は、少子化の影響により減少しており、
将来に亘って既存住宅は大量に余ってくる。
相続で余る住宅を使って、中古市場の活性化の枠を超えた提案も考えられないだろうか…等々、
「結婚や子育てを機に新築住宅を建てる人」の市場から少し視点をズラし、
シニア世代の資産を活用する施策を検討してみてはいかがだろうか。

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この記事の著者

ALEX

住宅会社・工務店の経営コンサルタント。経営・人事・財務など、中小企業の経営面でのアドバイスを行う。

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