消費税増税や補助金効果などで、受注が伸びている時に工務店が注意すべきこと。

工務店工期

最悪の事態ばかり考えていても仕方がないが、調子が良い時期だからこそ、
手を打っておかなければならないこともある。

リスクを恐れて何もしないのは最も悪いが、リスクを知らずに前進するのは「挑戦」ではなく「無謀」である。
リスクを知りつつ、前向きに手を打つことが肝要である。

 

◆売上拡大時のリスク
消費増税前のタイミングや住宅関連の補助金などの外的要因により
住宅会社が売上を拡大する際に気を付けねばならないことは、利益率である。

製造業であれば、売上拡大は1個あたりの製造単価の低下=1個あたりの利益増加につながる。
大量生産により、材料を安く仕入れられ、常時稼働による生産効率の上昇、
間接費の配賦額減少等により、1個あたりの生産コストが下がる。

しかし、注文住宅は「受注生産」であり、生産したものを販売する製造業とは違う。
受注生産を基本とする住宅会社では、大量販売=コスト減にはならない。

例えば年間50棟の会社が、急に年間100棟になったからといって、
建材や住設は2分の1の価格にはならない。大工の手間も同様である。
逆に急激な売上増で現場の進捗を管理しきれず、手待ち時間が増えたり、
発注ミスによる混乱などが発生することの方が多い。

国の施策で他社も忙しい時期では協力会社も忙しく、価格交渉も簡単ではない。
かといって、優秀な工務担当者を直ぐに採用しようと思っても、
残念ながら、どこも忙しい時期に「優秀な」工務担当者は暇ではないので転職活動などしていない。

通常の130%の仕事があるからと、さほど優秀でもない社員を3割増やすよりも
現在の人員に割増給与を払い、一時的に130%の仕事量をこなしてもらった方がマシである。

どの会社も忙しい時期は、売上高よりも丁寧な仕事と高い利益の確保を目指さねばならない。
特に消費増税後の需要減が確実に見えている時などは尚更、売上よりも「利益」である。

 

◆増やすべきは「投資」
売上が伸び、利益が出るとお金を使いたくなるものだが、
この時期に増やすべき支出は、「経費」ではなく「投資」である。

「経費」は現在に対する支出である。
例えば、事務所を大きくしたり、高級車を買ったり、壊れてもいないパソコンやコピー機を
買い替えてみたり…現状に対する消費が「経費」である。
なお、数年後に売上が減少するようなことになった場合でも、
一度大きくしてしまった事務所の光熱費や車やコピーのリース代は下がらない。

「投資」とは、未来の利益の源泉になるものに支出することである。
数年後に開花する新事業への出資、数十年の効果を見込むブランド広告、
数年先に主力になるであろう社員の採用や人材教育、独自工法の研究開発など、
これら未来のリターンが見込める支出は、順調な時期に積極的に「投資」すべきである。

「経費」は使えば終わりだが、「投資」は必ず返ってくる。
支出を決める際に、それが「経費」なのか「投資」なのか、少し考えてから判断する。
その積み重ねが、急激な需要減への対抗策になる。

 

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ALEX

住宅会社・工務店の経営コンサルタント。経営・人事・財務など、中小企業の経営面でのアドバイスを行う。

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